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【投資家が語る】なぜAzitに投資を決めたのか? Monoful Venture Partners 銚子周一郎さんと紐解く、事業変遷と今後の可能性

    2025.12.19

    Love from Azit 編集部

    「Love from Azit」では、様々な角度からAzitについてご紹介しているメディアです。今回は、Monoful Venture PartnersのVP of Fund Managementである銚子周一郎さんをゲストにお迎えしました。
    一度は見送りとなった投資が、どのようにして実現に至ったのか。そして、DeliveryXからForecastXへの事業変遷の裏側にある学び、物流・サプライチェーン領域におけるスタートアップの「勝ち筋」について、Azit代表の吉兼がインタビュアーとなりお話を伺っています。

    PROFILE

    銚子 周一郎氏 / Monoful Venture Partners / Senior Investment Manager
    東京大学文学部卒業。新卒で入社したリクルートでは、B2B向けの営業・新規事業開発部門の事業開発・CVCに従事。CVC部門では、日本及び欧米のVC投資業務に従事し、B2B SaaS、Fintech、シェアリングなどの領域で投資。その後、YCPジャパン(現 YCP Solidiance)でディレクターとして成長戦略策定やPMI支援、飲食関連子会社の代表取締役を歴任。現在はMonoful Venture Partnersにて、物流・不動産分野や関連技術を持つスタートアップへの投資およびファンド運営を担当。

    丁寧なフィードバックが繋いだ、Azitへの再投資

    ―― 本日はよろしくお願いいたします。はじめてモノフルさんにご相談させていただいたのは随分前になりますね。当時、物流・SCM業界ということもありご相談させていただいたのがきっかけでした。実はそのときはご出資が叶わなかったのですが、お見送りの理由にもすごく納得感があって。厳しいご意見もすっと入ってくるような内容でした。当時林口さん(Monoful Venture Partners / Head of Investments)にご紹介いただいたのが銚子さんでしたね。
    そうでしたね。弊社の林口も、投資する/しないということに対してフェアですし、事業理解を深めた上で、お断りする際もきちんとフィードバックするんです。私もそれを学んでいるので、お断りする際は丁寧に「なぜ今のタイミングで自分たちからの投資が難しいと思うか」を、説明させていただくようにしています。

    ―― その後改めて相談させていただき、ご投資いただくことになりましたが、当時のAzitの印象はいかがでしたか?
    2回目の投資検討のタイミングで、1回目に宿題になっていた課題に真正面からぶつかって、新しい事業を持ってきたことに、私自身揺れ動くものがありました。これならトライさせていただきたいと思ったんですよね。また、最初にお話させていただいた頃から、吉兼さんを良い起業家さんだと思っていましたし。
    当時我々は割とミドル/レイターの投資が多かったので、Azitはアーリーでしたが、個人的にもっとアーリーに投資したいという思いもありました。なので実は、Azitはアーリーへの投資の第一号案件だったんですよね。そして、やっぱり、大きな絵を描いているところとタッグを組みたいという思いもありました。

    銚子 周一郎氏

    ―― ありがとうございます。現在はForecastXに注力していますが、CREWやDeliveryXをやることで得た反省も多くあります。例えば、配送の無駄を削っても出てくる成果は100→95のようなものですが、在庫の無駄を削ると一気に70まで無駄が排除できるようなイメージなんですよね。それこそ財務インパクトで言うと桁が一桁変わるくらい大きなインパクトを残せると感じました。その分予算もつきやすく、話がサクサク進むというのも実感しています。配送は複雑な課題である一方、ビジネスインパクトがやや薄く、どうしても企業の中でのプライオリティが上がりにくいところがあったので「予算があるところでBtoBは戦わないと推進力が下がるんだな」というのは学びとして強くありましたね。
    その通りですね。物流やサプライチェーンって、現場のオペレーションが止められないじゃないですか。止めることはできないからどう段階的にやっていくんだって考えると、やっぱもっと上から、まさに上段から変革して過剰在庫を減らした方がよりコストインパクトがあるという発想に至る。これまでの物流事業に向き合ってきた総括としての今のテーマ設定が、これからのストーリーになる気がしています。
    ゼロから「サプライチェーンDX・AXのスタートアップです」と話すよりも、経営陣が現場や経営の課題を深く見てきた結果「下から登っていったら、金と課題が詰まっていたのはここでした」という方が、聞いている側、投資家としても顧客へのラポールもすごく効く気がしていて。

    ーー そうですね。実際に今お客様の声を聞いていても、需要予測から始まって、在庫管理して、最後物流の管理までサプライチェーン全体を最適化したいというご要望をいただきます。やっぱり物流分野で様々な企業様を支援してきた上で、上からやらなきゃいけないと思っているんです。という話は、すごく熱量高く聞いてくださるんですよね。
    それこそ「実はそこ(物流の部分)じゃないんですよ。御社の課題は」って言い切れてしまうと、多分4周分ぐらいショートカットする感じがしますよね。そして、日本のサプライチェーンの中で、変革への投資余力があり、意思決定権も兼ね備えた、エンタープライズの荷主企業様に着目されるのは、すごくセンスがいいとDeliveryXのときから思っていました。そこはクライアントを見立てるところはずれてないと思っています。

    SaaSでもSIでもない、「SaaS × SI」ハイブリッドモデルの面白さ

    ―― 今もDeliveryXの運営は続けていて、エンタープライズの荷主企業の物流・SCMを変革するという大枠のテーマは変わっていませんが、今年より注力することに決めたのはForecastXです。銚子さんの目線でご覧になって、山の登り方みたいなところは全然変わってるじゃないですか。その変化をどう見ていますか。
    先程申し上げた通り、可能性やポテンシャル、事業規模という観点でいうと、今のForecastX側のほうが大きいことは理解していました。ただ、当初の私の解像度では、「その領域にはSIerがいるのでは?」「ERPやCRM、在庫管理、WMSなど、業務システムが分断していて手が出せないのでは?」など、市場があると言っても“まるっとSIerの世界”だと思っていたんです。
    しかし、吉兼さんたちの話を聞く中で「ForecastXが切り取れる市場」が具体化されてきて、非常に面白い領域だと感じるようになりました。

    ーー SIerが担っているのは、基本的に“データの管理”なんですよね。基幹システムも含め、受注データや在庫データといった情報を管理する役割を果たしています。ただ、サプライチェーンに本当に必要なのは「管理」ではなく「最適化」であり、そのためのAI、厳密にはアルゴリズムです。ところが、そういったAIはこれまで十分に適用されてきませんでした。
    つまり、基幹システムとの連携は必要なので、SIerが提供している基幹システムやWMSがなくなるわけではないし、そこは僕らが置き換える領域ではありません。必要なのは、「データを受け取り、どの在庫数にすべきか、どの販売量が適切か、物流をどう組むべきか」といった最適化だけを担うレイヤーなんです。そこでようやく、自分たちは“ワンレイヤー上に乗るアプリケーション”を作っているのだと明確になってきました。
    これまでスタートアップがこうした領域に挑むと、SaaSモデルでは個社カスタマイズが難しく、登りにくい山だったと思います。ただ、僕らはSaaS的な要素とSI的な柔軟さをハイブリッドにすることで、最適化のロジック部分に加え、アラートやダッシュボード、レポートなどは個社ごとにカスタマイズ可能にしつつ、予測データや在庫データの管理方法は共通インフラのまま提供できる。SaaSとSIを掛け合わせることで初めて成立したモデルだと感じています。
    さらに、AIの進化がこの領域にとてもフィットしていると感じています。以前ならSIのように大きな組織を作らなければできなかった個別開発が、今では「1社に1人貼り付けば、十分に高速で作り込める」世界になってきました。データの整形ひとつとっても、昔はPythonでスクリプトを書くのに長く時間がかかっていたものが、今はAIと少し対話するだけでデータが綺麗に整うようになっている。
    そうした意味でも、この領域は“時代感”や“AIの流れ”と非常に合っている、と強く感じています。
    そうですね。そこは私も非常に期待しているポイントです。御社のビジネス、というより“スタイル”が面白いと感じているのは、単なるSaaSでもなく、SIでもなく、その中間にあるハイブリッドなモデルを追求しているところなんですよね。
    SaaSのスケーラビリティと、SIの柔軟さを掛け合わせることで、プロジェクト単価をしっかり取りにいける。もし、そのモデルの中から誰にでもわかりやすく伝わるような象徴的な成功事例としてカチッとはまれば、世間からの認知も含めて一気に美しい形になると思っています。
    そして、そこまで行けば、あとは“どう高速に顧客に価値を届けるか”という生産性のフェーズ、組織拡大のフェーズに移っていくはずです。
    AIを活用しながら、プロジェクトマネジメントができるコンサルタント、ある種エンジニアリング感覚も備えた、最近よく話題になるFDEのような人材が揃っていけば、そこからは組織全体の速度が一気に上がる。そんな未来が、見えてきていますよね。

    「現場を変えないテクノロジー」と、若手が成長する環境

    ―― 改めてこの物流のこの市場、先程SIerさんの話もありましたが、スタートアップが挑む価値ってどういうところにあると思いますか。また、投資家としてスタートアップには何を期待したいでしょうか?
    先程もでましたが、物流やサプライチェーンは「止められない」業界です。だからこそ、既存のオペレーションを止めずに導入できるイノベーションが求められています。現場の人たちは「変えたいけど、止められない」という矛盾を抱えているんです。
    その中で、スタートアップに期待するのは、オペレーションの変革前提ではなくて、「今の仕組みを維持したまま進化できる」という体験を提供することだと思っています。現状のワークフローに寄り添いながら、外からのアイデアでとんでもないイノベーションを起こす──そんな黒船の登場を期待しています。
    ―― なるほど。今僕たちがやっていることは、端的に言うと「エクセルファイルの管理のリプレイス」なので、インプットとアウトプットのフォーマットが一緒だったら、現場の方々のワークフローは変わらずに作れるんですよね。
    確かに。仰るような既存のオペレーションを一切変えずに、業務効率を劇的に改善できる、みたいな魔法を、現場は探しているんですよね。
    Azitって、今まさに現場から何が求められているか、そのアンテナの感度が高い経営陣がいるというところは大きいと思っています。
    ―― 僕たち自身は、事業ドメインは正直なんでも楽しいと思っています。(笑)

    吉兼 周優

    それがいいですよね。そういう感覚はすごい。特にその若手でテクノロジーもビジネスも興味ありますっていう人は、すごい相性いいなと思って。
    理系で新卒コンサルの道を選んだけど、標準端末しか使えなくて、「もっといろんなツールを自由に使えたら、課題解決のスピードも提供価値も全然違うはず」って思っている皆さんは、みんなAzitに来ればいいと思っています。

    ―― 大手クライアントの顧客の成果に繋げないといけないというのもありますし、かつ社内チームのプロダクトにも繋げなきゃいけないっていうミッションもある。それを楽しめる人だったら成長できるばではないかと思います。
    確かにAzitのお客様は、日本社会の生活基盤と直結しているような大手企業が多くて、プロダクトの理解と顧客対応との両方が求められますね。若手が身につけるべきビジネススキルを得るには、非常に良い環境だと思いますよね。

    聞き手:吉兼周優 編集:坂井華子

    採用情報

    Azitでは、各職種で採用を行っております。詳細は、以下のページをご覧ください。
    https://herp.careers/v1/azitinc

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