2024年最後にお届けするのは、Azitの代表取締役CEOを務める吉兼のインタビューです。Azitでは2024年に主力となる事業名をCREW Expressから「DeliveryX」に変更し、提供するサービスの幅を広げ、さらなる成長を目指しています。
起業してから11年。何を目指して創業し、今何を考え、どこへ向かおうとしているのか、代表取締役COOの山口が読者の視点に立ってインタビュアーとなり、深堀りしました。
左:吉兼 右:山口
PROFILE
株式会社Azit 代表取締役CEO 吉兼周優
1993年埼玉県生まれ。慶應義塾大学理工学部管理工学科卒。在学中である2013年11月に株式会社Azitを創業。2015年に、プロダクト・マネージャー兼デザイナーとして、配車アプリケーション「CREW」を公開。2020年、コロナ禍で事業を物流・SCM領域のDXを支援するDeliveryXへと転換。現在は京都在住。
AからZまで。全てにITを使って何かを作りたい
ー Azitを起業したのは、在学中ですよね。当時は初めから「起業」を意識していましたか?
最初から「起業をするぞ!」みたいな強い意志があったわけではないんですよね。Co-Founderの須藤や十亀と出会ったのが2012年の頭ぐらい。最初は、サークルのような形でAzitとして活動していたんですよ。いろんなサービスを、皆でワイワイ作ってみたりしていて。
その中で、写真管理アプリや電子書籍を作れるWebサービスなんかも作って、シリコンバレーに行って見てもらったりもしました。
ー なぜ「Azit」という名にしたのでしょうか。
とにかく僕たちはITが好きだったので「AからZまでITを使って何かを作りたい」という想いをそのまま表現したのが「Azit」です。そして、日本語でいう秘密基地のニュアンスの「アジト」という意味も含んでて。「僕らのアジトとして、このチームを成長させたいな」という思いでスタートしたのが、Azitなんです。
ー なるほど。起業はどのくらいのタイミングで決めたんですか?
当時はまだ卒業後に事業を継続するか就職するかも決められていなくて。法人にはせず、ファッションECやったり、家庭教師のマッチングサービスをやったりもしていたんです。
2014年末くらいに、すでにお会いしていたアンリさんとお話をして、出資していただくことになり、本格的にスタートアップとしてチャレンジしていくことになりました。それが卒業の3ヶ月前ぐらいですね。そのタイミングで、Azitを法人として続けていく覚悟を決めました。
ー アンリさんにご相談したときは、まだ事業が定まっていなかったということですよね。
そうなんです。当時はまだCREW*に絞っていたわけではなく、電動キックボードなどモビリティ関連も考えていましたし、SNSを活用したDtoCなんかも。合わせて100個くらいは、アンリさんに相談していたと思います。アンリさんから「これは吉兼に向いてない」みたいにアドバイスをいただいたりもしていました。その中の事業候補の1つが、ライドシェアだったんですよね。最初は「日本って何でライドシェアないんだろうね」って、シンプルな疑問から始まりました。
*Azitが運営していた一般のドライバーと乗客をマッチングするライドシェアサービス。2020年にサービス休止
ー 当時海外はライドシェア全盛期、まさに気になる領域だったわけですね。
そうなんです。日本でもやるべきだろう、という観点と、自分たちの周りの人たちが顧客になりうるかみたいなことを考えながら絞っていって。それが2015年の春くらいですかね。
その頃もまだCREWだけに絞っていたわけではなく、3つか4つくらいのサービスを一緒に回しながら、検討していました。なので、実際CREWは「これをやりたい!」みたいな始まりではなく、面白そうなものを絞って残り続けたようなイメージなんです。
CREWからDeliveryXへ
ー コロナ禍を経て、現在のDeliveryXのサービスへと変化しましたね。
CREWの継続が難しいと判断したとき、その後やることをゼロベースで考えすぎても無限に浮かんでしまうので、CREWを運営していたAzitだからこそできることに挑戦したいと思いながら、メンバーと議論を重ねていきました。
移動という切り口は変えず、人じゃなくて物を運ぶとしたら、今まで培ってきたプロダクト開発のナレッジも、大企業や官庁などと一緒に動いてきたケイパビリティも活かしていけるのでは、と考えました。
ー 簡単に表すと、今のDeliveryXはどういう事業をやってますか?
DeliveryXの名の通り、配送のDXを行っている会社です。ただ、今後はデリバリーに限らないXにしたいなとは思っているんですよね。現状のプロダクトを言い表すと「デリバリー」ではあるのですが、これが今後ウェアハウスXになってもいいし、ストアXになってもいいし…とはいえ、あまりXにこだわりがあるわけではないですが(笑)
サプライチェーン全体でDXは広がっていくので、配送デリバリーというところを起点とはしつつ、周辺領域までプロダクトの価値を広げていくっていうのが大事だと思っています。
ー ラストワンマイルの配送から始まったDeliveryXですが、現在はより「輸送」そのものにも関わるように広がってきていますよね。
初期は当日配送やクイックコマースのような領域を構想しましたが、物流産業や日本社会へどういうインパクトをもたらすのかを考えたときに、クイックコマースだけの改善やラストワンマイル単体の解決では、根本的な課題を解決していないと感じる点が多かったんです。
色んな企業の方々とお話ししながら見えてきたのは、例えば配送だけではなく倉庫の課題や、現場ドライバーさんだけでなくオペレーターさんも人手不足、みたいな周辺領域のサプライチェーン全体の課題が複雑に絡み合っているということでした。
ー サプライチェーン全体にテクノロジーを活用していきたい、と。
そうなんです。もちろんサプライチェーン全体に広げるという側面もあれば、ただシステムで生産性を上げるだけでなく、AIの活用も積極的に取り組んでいくべきだと思っています。人手不足とAIって、すごく相性がいいじゃないですか。これまで人がやってきた仕事の中で、AIが意思決定を代替したり、業務のリプレイスができるようになったり。それによって、より働いている人たちをエンパワーメントできるような仕組みを作るのも、僕たちの役割だと考えています。
Azitで働いた時間そのものが価値になるように
ー 少しテーマは変わりますが、どんな組織にしていきたいというイメージはありますか?
珍しいかもしれませんが、僕たちは「これを成し遂げたい」「この課題を解決したい」みたいなミッションの元に集まった集団ではなく、冒頭にお話したようなイメージで、Azitとして働いているのが好きだから続けている、という感覚なんですよね。
なので、個人的なモチベーションとしては、皆がつまらなくなったり、一緒に働くメンバーが嫌になってしまったり、Azitで働きたくなくなってしまう状態には絶対にしたくないと思っています。
もちろん社会にインパクトを与えることも、会社として資本主義の中で戦って勝つことも大前提大切です。そのゲーム自体も楽しみたいと思ってますが、そもそも「Azit」の名の通り、そこにいることが楽しくてわくわくするとか、好きな人と一緒に何かができるみたいな居心地の良い場でありたいなと思ってて。
本気で仕事を楽しくやってるからこそ居心地のいい場というのを、作り続けたいと思っています。もちろん稼ぐことも事業を伸ばすことも大切ですが、そのためだけに人生の時間を無駄にはしてほしくなくて。事業を伸ばし社会に対して貢献することを通じて、このメンバーと一緒に働いてた時間そのものがいい時間だなって思ってもらえたらいいなと思っています。皆が後から振り返ったときに、そう思える場であることが、創業者として自分の幸福だと思っています。
ー セカンドプレイスだけどサードプレイスのような感じですね。
そう、そういう感じです(笑)事業を伸ばすのはもちろんですが、社員が幸せに働いてくれることも、僕のミッションに入っていると思っています。でも、もちろん長く働いてもらえると嬉しいですが「絶対ずっといてほしい」と考えているかというと別にそうでもなくて。人生の一部の接続の場所であっても、その瞬間をともに楽しく過ごせるならいいなと思っています。
ー 普段京都に住んでいてリモートワークという手段を取っていますが、会社の雰囲気の作り方やコミュニケーションで大切にしたいポイントは?
出社かリモートかどちらが良いかというのは、これからも時代に合わせて変わっていくと思っていますが、現時点ではまだ世界的にも正解がないですよね。会社ごとに試行錯誤をしているフェーズだと思います。
僕自身は京都に住み、最近は毎週東京にいるような生活になっています。エンタープライズのクライアントの方々が東京にいらっしゃるからというのもありますし、メンバーと顔を合わせるのもやっぱりいいな、と思っていて。プロジェクトベースの生産性だけを追い求める会社にするのは、そもそもAzitらしくないなと思っています。信頼関係が作れている人と働くというのを、やっぱり大事にしたいなとは思っていて。
例えば、すでに信頼関係が作れている状態なら頻繁に対面で会う必要はないかもしれません。でも、初めて一緒に働く人がいきなりずっとリモートというのは、やや難しいところがあるなと感じていて。新しく入ってくださった方ともどんどん顔を合わせられるようにしたいなと思ってますし、気軽に話しかけられるような距離感でいたいとも思っています。
Azitの場合は、東京に住んでいても週5で出社しているわけではなくて。リモートの人もいる中で全社でうまく一体感を持って働いていくにはどうすべきか、情報の連携が途絶えないようにするにはどうすべきか、というところの仕組み作りや、仕組み以上にカルチャーを育てていかなくてはいけないと考えています。リモートの働きやすさも、出社の良さも見出していきたいですね。
目の前主義じゃないからこそ選んだ未来
ー 自分自身を起業家としてどう見ていますか?
もちろんプロダクトは好きですし、西海岸も大好きなのでシリコンバレーっぽい企業にしたいなっていう憧れもあるはあるのですが(笑)でも、自分なりに少し珍しいかと思うのは、もちろん資本主義のゲームも好きだし得意だとは思っていますが、それをあまりモチベーションに感じていない点ですかね。
面白いやつらと人生の時間を豊かに過ごしていきたいがための手段。それがスタートアップで起業することだった、という感じなので、別に起業家というキャリアにはあんまりこだわりもないですし。
ー 結果志向よりはプロセス志向がなんですね。
そうですね。とはいえ、若い起業家の持つエネルギッシュな感じは失いたくないなとも感じていて。やっぱり自分の好奇心や探究心、人との関係性を大事にしながらやっていきたいなという思いはずっとありますね。
あと、あんまり目の前主義じゃないみたい所もあります。起業したときも、手前の1〜2年で成功しようみたいな期待ではなく「10年後にこっちを選んで正解だったな、と思えるか」みたいな軸でも見ていて。大きな意思決定は、割と長い目で見るタイプだと思います。
テクノロジーで社会を変える。Azitが目指したいこと
ー 改めて、Azitは何を目指す会社だと思いますか。
テクノロジーで社会を変えるというのは、もちろん目指していきたいことです。海外の分かりやすい例だと、Palantirのような会社を目指していきたくて。Palantirのモデルって、これまでのスタートアップとも違えば、SIerとも違うんですよ。テクノロジーで社会を変えるという意味で、プラットフォーム作りをしているわけではなく、大企業を変えるソリューションを持っていてその力をいかしていく、そういった意味で、最も成長している会社だと思っています。
日本でこれをやっていくときに、どこから立ち上げてどんなケイパビリティを身につければ良いのかでいうと、まだまだ試行錯誤の段階ではありますが。SaaSだと解決しきれないような領域を、AIを使って横断的に解決していければいいなと考えています。
エンタープライズと一緒にテクノロジーを活用できる会社は、面白いですよね。プラットフォームだけでもSaaSだけでもないハイブリッドな企業を目指していけたらと思っています。
ー その先にある未来の生活を変えていくようなイメージでしょうか。
生活もその一つだと思いますし、配送に限らずテクノロジーで変えたい部分は多分にありますよね。日本は世界に比べデジタル化や活用が、ルールの改革も含めて遅れがちなので、10年経ったらだいぶ取り残されてると思いますし、それこそ30年経ったらもう取り返しがつかなくなってるかもしれません。
大企業でもテッキーな意思決定をできるように、その意思決定のサポートをする存在になれることも大切だと思っていて。相手は、ときにエンタープライズかもしれませんし、政府かもしれない。大きな組織の意思決定者から信頼してもらえるような、テクノロジーを活用する会社になることが求められていると感じています。
特に、物流やサプライチェーンという領域は街の小さなお店とかではなくて、大企業が国民の生活のインフラとして担っている部分がほとんどで、彼らを変えていかないと社会全体が良くならないのが自明な領域でもあって。そこにスタートアップがテクノロジーの面から支援していくというのは今後の日本のあるべき姿なのではないかな、と思います。
ー 最後に、これを読んでくださっている方々に伝えたいことはありますか。
AzitではVALUEとして「Love & Respect」というのを掲げています。心の底から愛とリスペクトがある人と働きたいと思って作られたチームでもあるので、これから一緒に働いてくださる方にも、大切にしてもらえたらいいなと思っていますし、その社風を感じてもらえるような会社でありたいな、と思っています。
また、AIの活用というのも全社的に推進していきたいと考えています。全員がAIを使いこなして、どんどん少数精鋭でも社会に大きなインパクトを作れる会社にしていきたいですね。これは別にエンジニアだけの話ではなく、Bizサイドもコーポレートも、全部門で活用できると思っていますし、全員のバックグラウンドに関係なくリテラシーを求めていきたいなと思っています。
もちろん、人と一緒に何かをすることはすごく貴重な経験だし、大事だと思っていながらも、その裏側でAIを活用しまくれるようになっていきたいし、そういうチーム作りをしていきたいですね。
インタビュアー:COO 山口 恭平、編集:坂井 華子
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