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【イベントレポート】 BtoBスタートアップのネクストトレンド「第2回 Beyond SaaS ー産業を創るー」

  • #イベントレポート

2022.12.26

Love from Azit 編集部

イベント概要

ニューノーマルな生活やビジネスに対応するため、新たなサービスや商品も続々と誕生した2021年。今回は、次代をけん引する新ビジネスの中でも"BtoBスタートアップ"に焦点を当て、SaaSの新たな潮流や市場の可能性について4社で対談を実施。

第2回となった本イベントでは、第1回でも多くの参加者から注目を集めた「各社の参入理由」や「どのようなことに現在チャレンジしているか」という内容を中心に語られた。

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  • 鈴木隆宏

    【登壇者モデレーター】ジェネシア・ベンチャーズ:General Partner

  • 遠藤崇史

    ROUTE09:代表取締役CEO

  • 本間拓也

    Manabie:代表取締役CEO

  • 吉兼周優

    Azit:代表取締役 CEO

Vertical SaaSに挑戦する各社だからこそ語ることのできる内容をベースにパネルディスカッションを行いました。

総勢40名以上の方が参加したオンラインイベント。
スピーカーとなった3社の事業説明や各社が考える「BtoB SaaS」への想い、今後の展望など熱いディスカッションが行われました。
約1時間のイベントの中から要点のみ一部ピックアップしてお伝えいたします。

なぜAzitはドメインに「移動」を選択し、今もなおここまで深掘ることができているのか?

吉兼周優

事業開発を2012年よりスタートし、2013年に会社を設立。
当時、ソフトウェア開発を起点に事業を行っていた中で、スタートアップが好きでスタートアップど真ん中のテーマを展開していきたいと思っていました。
世界各地ではモビリティ領域でスタートアップが生まれるなかで、どんなイノベーションがあるかを考えた時、「スマホで位置情報が取れることで、人の行動や運転手の行動がテクノロジーで最適化できる余地があること」をモビリティ領域に対して仮説として最初に考え、この仮説の深掘りを今もなお続けています。

これまで「人は移動したくない/交通費を払いたくない」という最低限の移動で済ませたい風潮があり、そこからデリバリー領域に興味がありました。

コロナが世界中で大流行し、人が移動しなくなったときに、社内のメンバーたちと会話をするなかで「クルーエクスプレス」へのチャレンジを決めました。

2012年12月にクルーエクスプレスを公開、その後1年間は「移動」ドメインからはブレることはないものの、次に何を展開していくか・チャレンジするかを検討し続けました。
そして「To C/To Bどちらが相手なのか」「地方や都心部なのか」など、誰に向けてどのように提供をしていくかについて選定を行いました。

ここから気づいたことは「バイク便」「フードデリバリー」「当日配送」など、どの領域・どのターゲットに対しても、テクノロジーで解決できる課題はかなり近いということでした。
そうであれば、規模が大きいところから挑戦しセールス効率のよいものから始め、SMBは中期的にやろうという順番になりました。

複雑性の高い領域にROUTE09がチャレンジした理由は何か?

遠藤崇史

伝統的な大企業勤務を経て、自分でスタートアップを立ち上げ、ゼロからプロダクト作りを経験したことから、大企業のシステムやプロダクト開発の現場を新しいアプローチで変えていきたいと思うようになりました。
大きな課題に対して解決する手段を具体的にイメージできていたことに加えて、オープンイノベーションやスタートアップ・協業など、大手企業を取り巻く時代の流れを考えた時、今このタイミングで始めるべきだと感じたことも創業の後押しとなりました。

2012年から現在まで「教育」をトライし続けているのはなぜか?EdTech(エドテック)領域分野における山の登り方は?

本間拓也

これまでの経緯としては、「Quipper」「スタディサプリ」でまずBtoCのサービスを提供していました。「Quipper」は”動画で学習する”シンプルなアプリとなっており、マーケティングで広めていくことをインドネシアやフィリピンで行い、「スタディサプリ」は日本で展開を行いました。

サービス提供する中で、BtoCでは子供たちがなかなか自発的に学習しないため、管理する人やサポートする人が必要であることがわかりました。
そこで学校へのアプローチを開始しました。

「スタディサプリ」は現在日本の学校数千校で導入され、「Quipper」でも5000校へ訪問営業を実施する中で、先生がいると子供も使うことを実感し、BtoBの走りをしていました。
その中で、「Quipper」の動画学習だけでは学校の学習全容を掴めていなかったり、先生達は教務以外の業務も多いため、ここをデジタル化しないと先生たちが楽にならないと感じました。

そこで現在は、先生達が関わるあらゆる領域をすべてデジタル化できるよう、教務だけでなく校務を含め分析し、システムを構築している段階となります。
塾・学校・高等教育機関、それぞれすべて洗い出しを実施したところ、教務の所はシステム的な違いがなくても問題ないが、校務部分は異なることが見えてきました。

そこから教務においては1つのシステムを他の機関で転換して展開していくことは可能である、という仮説が今見えてきています。
また、インドやフィリピンなどグローバルでもこのシステムは変わらないと考えています。特にインドでは1学年2000万人近くの生徒が存在し、さらに小学生は1億5千万人。そして進学率も上がってきているようなマーケットであるため、日本で磨いたシステムやオペレーションを海外にも展開し、効率よく子供たちにデジタル化したシステムを届けていきたいです。

生徒向けサービスを出しているVertical SaaSな会社が多いなかで、「オールインワン」で戦うことができているのは、多くのエンジニアがいるからこそ行うことができているのでしょうか?また初めから挑戦していたのですか?

本間拓也

先生や経営者たちの課題として、ログインだけで授業の半分が持っていかれてしまったり、データ自体がバラバラになってしまっていたりと、様々なシステムを使い過ぎていることでオペレーションが煩雑になっていることがありました。
この課題解決としてのオールインワンサービスを提供することがありました。

ベトナム展開した際に、日本よりもリーズナブルで優秀なエンジニアを採用・マネージメントすることは前職から経験しており、競争優位になると感じていたため、すべて作れるように動いていました。

みなさんはコンサル的に課題を解決し、課題の共通点をプロダクトへと落とし込む際、「どこまでをプロダクトに落とし込むか」についてはどのように考えますか?またどこまでコンサル的に落とし込むのでしょうか?(イベント参加者)

本間拓也

我々はかなりコンサル的なことを実施しています。
自分が教育機関を経営したらうまくいく」と言えるくらいまで、事業戦略やオペレーションを理解していこうと社員に話しています。

その中でまず、中長期の経営課題から経営者と握っていくことをやっており、事業を成長させるために、システムやコスト削減や売上アップ施策について解像度高く提供しています。
さらに、プロダクトでどのように提供価値を作り満足度をあげていくかなど、ROI含め数値化し提示した上で、既存プロダクトとのフィット感前提で、事業インパクトの大きいものを優先度高く展開しています。

また、1社に対してだけのバリューにならず他のお客様に対しても普遍的に提供できる価値であるかについては、コンサルチームやプロダクトチームが密に会話してジャッジを行ってきました。

吉兼周優

Azitではソフト開発でDDDを入れているため、ドメイン言語をどう作るかが重要になります。
例えば”配送”といっても「何が、どこまでが配送なのか」の定義がありません。
開発をしていく上で、この言葉の定義が必要となります。
逆算的になりますが、エンジニアリングの定義ができるものはプロダクトを作りますし、そこが曖昧なうちはソフトウェア開発やオペレーションに落とし込まず、コストをかけない判断を行うこともあります。

例えばベーシックなSaaSプロダクトで解決できない場合、海外SaaSで解決できるのであれば、海外のものでドライバーマネジメントしています。

無駄なものは全く作りたくないため最低限の開発になるように意識しており、「ドメイン言語を明確にする」というところをBizDevやソフトウェア開発チームに対して重要なポイントとしています。

遠藤崇史

すべてのプロダクトのUXや業務フローはすべて洗い出し、把握し、どこを自社プロダクトで賄い、SaaSを導入してカバーするのか、開発しないべきかを判断するために、細かい部分までUXや業務フローを明確にしています。

Vertical SaaSの苦悩( 顧客理解の解像度 / プロダクト理解度 / 組織・採用 / 他)をどう乗り越えているのでしょうか?

本間拓也

開発チームへのドメイン知識に関してはきちんと細かく伝えています。

まず我々の場合、大きいマーケットの中で開発者がベトナム人やフィリピン人なのでローコンテクストです。
教育制度は国によって異なり、日本の塾のような文化が発展していない国となります。
そのため、ドキュメンテーションしたり、図に落とし込んだ上で、ビジネスモデルから説明し、オペレーションや経営課題・塾の成長についてなどを彼らにも細かく伝えています。

今後インドに展開する場合、インドの教育機関のオペレーションや経営課題を理解することが必要となり、そこから始まると考えています。
様々な課題がある中でプロダクトとして優先順位をどのようにつけるか、についての意思決定はかなり難易度高く、今後出てくるであろう課題にもなると思います。
今後、課題に対応できる組織やワークフロー、ドキュメンテーションなどを早めに準備する必要があり、先回りしていきたいと考えています。

吉兼周優

顧客の理解度は特にエンタープライズだと複雑かつ理解が難しいところもあります。
そしてDDDのドメインについてもメンバーごとでのリテラシーの違いもあると理解していますが、個人的にはそれが好きなメンバーで集まるしかない、と考えています。
難しいし複雑だからこそ考えるのが好きなメンバーや、カルチャーレベルでコミットできるメンバーであることを肝としています。

そんな意識を持つ人は母集団として小さくなるものの、そこにディープな関心を持っている人たちが集まることで快適に働けるのではないか?と考えています。

もちろん組織を拡大するフェーズになると、モチベーションや働くことへの求めるものや取り組み方が異なることは理解しています。
そんな中でも、今の会社のフェーズについては、メンバーを集中させる・選択するフェーズとなります。

プロダクトマネージャーの職種が多いお話がありましたが、一定ドメインやECへの知識や経験が必要と思いつつ、世の中的に経験者が少ないイメージですが、どのような人を採用しているのでしょうか?また、未経験の場合のトレーニングプロダクトはありますか?(本間)

遠藤崇史

今はPdMや類似経験者を主としています。
うちの場合は、プロダクトを立ち上げてお客さんと一緒に事業をグロースしていく上で、事業立ち上げのための「プロダクト定義」や「UX定義」をする上での熱量がある人や、ものづくりが好きな人の方がマッチしていると考えています。
ドメイン知識がなくても、上記がマッチしているとお客さんに評価されたりもしますね。

教育機関関係なくBizDevで活躍している印象ですが、教育領域での課題の解像度をあげるのにどれくらいの期間がかかり、どれくらいの期間で戦力となるかと考えていますか?

本間拓也

教務と校務、それぞれサポートするかでかかる期間は異なります。
わかりやすい教務と比べて、請求管理や時間割管理などの校務については業界知識が必要となります。

そして高等教育についてはもう少し難易度が高く、高いからこそ誰もチャレンジしていない市場でもあります。そのため将来的にも攻めていきたいと考えています。

吉兼さん、物流領域はどうですか?

吉兼周優

「物流領域といいつつ、自社では物流というワードを使っておらず、会社でやっていることは違っていると思っています。
自分達の課題解決は半径10km、リアルタイム性のあるもののため、ヤマト運輸や佐川急便のような「物流」とは異なり、どこかの業界経験が生きるというわけではなく、物流業界を積極的に採用しているわけではありません。

どちらかというと、ピュアに課題解決の視点をエンジニアリングやデザイン視点で考えられる人が本質的であると思っています。

それでは最後に、「Vertical SaaSの未来」についていかがでしょうか?

吉兼周優

ストーンマイル配送の分野を行っていますが、既存のものと違うところが面白いと感じています。
例えば、「宅配」は今当たり前にありますが、「ラストワンマイル配送」には定義されていない状態です。
freeeやマネーフォワードは会計のルールが存在していますが、ラストマン配送については管理や配送体制・規格について、グローバル含めまだ未発展で定義づけが完了していません。
その中で新しいテクノロジーを使って顧客に対して課題解決をしている動きが先行していると考えています。

直近、配送分野でプロダクトが出来上がってきており、この新しい産業ができてきている中でルールメイキングできるところが日本社会の感じがあり、面白いところであると思います。

同時に顧客の課題解決や事業開発は面白いが、それで終わる会社にはしたくないとも考えています。
世の中がどうなるかわからない中で、課題解決に繋げていくところがスタートアップの一起業家としても個人の人生としても取り組みたいです。
例えば地震が起きた際、被災地に対して配送網を届けられるような活動を自分達の会社ができるのか、CO2削減などグローバルな課題や世の中が求めていることに対して、どのようにアプローチしていくのか、という部分はSaaS関係ない部分で取り組んでいきたいと思っています。
「かっこいいスタートアップ」を作っていきたいです。

遠藤崇史

これまでグローバルな事例も踏まえてみると、バーティカルSaaSで伸びているのはホールプロダクトかつ圧倒的なコストメリットを提供している会社だと認識しています。
日本でも同様だと思いつつ、この先を見据えるとコストメリットだけでなく、お客様の新しい売上の機会創出に貢献するような会社が大きくなっていくと思っています。

マーケティングや営業のソリューションだけに頼るのではなく、お客様のオペレーションに根付いて売上を伸ばしにいく会社はまだ多くないので、だからこそ可能性がありおもしろいポイントです。

本間拓也

マナビーが今やっていることは、教育の未来を実現しているとはまだ思えていません。
動画での教育がやっと世の中に少しずつ広まっている状態。

思っていることの1つ目に、将来的には新しい教育の形や単純なコストカットではなく新しい事業形態のデジタル化サポートがあります。
ただし、いきなり新しい形で参入しても浸透するまで時間がかかるため、既存のSaaSプロダクトでできるだけ多くの教育機関をサポートし始めたあとに、新しい教育のありかたやコンテンツを提供していきたいです。
それが新しい教育を提供する上での最速の道ではないかと考えているので、今持っているプロダクトを広げていきたいと考えています。

2つ目は
オンラインでの学習は日本ではなくインドなどで先進的な事例が生まれてくると考えており、インドの教育はデジタルファーストになっていくと思っています。

インド政府の方針として、大学進学率の底上げがありインフラが必要となってくるため、デジタルファーストの新しい教育の形が求められていきます。
そんなデジタルファーストの国に対して、フィジカルのオペレーションが進んでいる日本とオンラインとを組み合わせて、楽しみながら展開していきたいと考えています。

さいごに

今回レポートで取り上げることができなかった話もディスカッションされ、モデレーター・スピーカーの熱量の高いイベント開催となりました。

イベントにご参加いただいたみなさまありがとうございました。
また、今回日程が合わずに参加できなかった方も、今後様々なイベントを予定しておりますので、ぜひ今後も注目いただけますと幸いです。

また次回のイベントもお楽しみに!

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