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【イベントレポート】 BtoBスタートアップのネクストトレンド「Beyond SaaS ー産業を創るー」
2022.11.25
Love from Azit 編集部
イベント概要
ニューノーマルな生活やビジネスに対応するため、新たなサービスや商品も続々と誕生した2021年。今回は、次代をけん引する新ビジネスの中でも"BtoBスタートアップ"に焦点を当て、SaaSの新たな潮流や市場の可能性について4社で対談を実施しました。
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福島広造
【登壇者モデレーター】ラクスル株式会社:取締役 COO
幸松大喜
キャディ株式会社:製造支援本部 本部長
狭間健志
ハコベル株式会社:代表取締役 CEO
吉兼周優
株式会社Azit:代表取締役 CEO
今回はスタートアップ(SaaS)市場や各社の”SaaS+α”を軸にパネルディスカッションが行われました。
総勢40名以上の方が参加したオンラインイベント。
スピーカーとなった3社の事業説明や各社が考える「BtoB SaaS」への想い、今後の展望など熱いディスカッションが行われました。
約1時間のイベントの中から要点のみ一部ピックアップしてお伝えいたします。
3社は共通して「初期事業がSaaSではなかった」。そんな各社がBtoB SaaSに参入したきっかけとは?
「受発注事業から見えてきた新たな可能性に大きなニーズを感じた。」
幸松大喜:
創業当初からSaaSを出していく構想は元々ありました。
「ものがほしい」「金属部品が欲しい」というお客様に対して、オンラインで発注を受け、届けるというところをキャディが担ってきました。
しかし製造業にとって、「ものを作り」そして「ものを納める」ことは非常に本質的であり難しい体験で課題もあります。
SaaSでいいプロダクトを出す上ではドメイン特有の課題への理解の深さが大事。また、ユーザー目線で細部にこだわりをもってプロダクトを進化させることが大事です。
これまで自分たちが経験した課題に対してプロダクトを磨き、社内で実際にプロダクトを使用することで進化させることできる、という構想があるなかで受発注の事業をおこなってきました。
キャディも4年半この事業をおこなってきた中で辿り着いたのが、ニッチな領域ですが強いニーズのあった「図面データの管理・活用」でした。
このタイミングで「図面データの管理・活用」をプロダクト化してこうとなったきっかけや確信は何かあったのでしょうか?
幸松大喜:
1つ目は「エンタープライズ企業のお客様とのお取り組みの中で、継続的な接点を持ち続けることできること」。
受発注をおこなっている中で、様々な企業様との接点を持つことができました。特にエンタープライズ企業のお客様との取り組みを行い始めたのはここ1~2年。
会社として「図面データの活用」においては、エンタープライズ企業のお客様からニーズを獲得していきたいと考えていたので、この取り組みを進めることにしました。
2つ目は「社外に提供していく、という前提で社内ツールの開発を行ったこと」でした。
ファーストユーザーの自分たちが産業に入っていく中で課題が見え、プロダクトに落とし込んでいきました。
狭間さんはいかがでしょうか?
お客様の課題解決が参入のきっかけに繋がった。
狭間健志:
ハコベルは、マッチングのプラットフォームを起点としてはじまったので、当初はSaaSへの参入は考えていませんでした。
最初のお客様であるネスレ様の運送会社の1つとして、ハコベルを採用いただいておりました。
ハコベル導入前、他の運送会社とのやりとりはエクセルをメールで管理するというアナログシステムとなっており、情報連携の不備による配達ミスなどにより再配達のコストが発生していました。
「全てシステムで完結させたい」というネスレ様からの要望がきっかけとなり、ハコベルの仕組みだけを切り出したシステムを大手食品企業様やメーカー様へと広く展開していき、SaaS事業に参入することとなりました。
なるほど。それでは最後に吉兼さん。
toC事業で培ったノウハウを元に、toBへと参入。
吉兼周優:
我々は元々CtoC事業「CREW」がスタートでした。
20億円弱の資金調達を行った年に「コロナ」の影響を受け、トラクションは大幅に減少。しかし、資金調達を行っていたこともあり当時ある資本の中で事業を生み出し、成長させることが必要でした。
モビリティマーケットに参入した理由の1つに「位置情報をリアルタイムでとれる」ことへの技術的な革新が起こると考えていました。
同時にデリバリーマッケットもウォッチする中で、後発でUber Eatsと正面から戦うことは難しいものの、ここに自分達が培ってきた配車のアルゴリズムが生かせるのではないか?と考え進めてきました。
ただしSaaSを立ち上げることは、プロダクト開発にかかる時間も長く当時それだけにフォーカスするには厳しいものがありました。
そこで「SaaSで売っていく」のではなく、まずはコンサルやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として自分達ができることを元に業界の知見を貯めていくことにしました。
生産性改善やコスト削減をしていくということに対し、テクノロジーを使って課題解決をすることはできそうだったので、そこに対して自分たちが作ったものを売り込んでいきました。とはいえアナログに配車もするし配車管理も行っていました(笑)
まずは事業として作り上げ、ノウハウをため、SaaSとして展開することでただの受託事業ではなくテクノロジーによってレバレッジを効かせることができる。
これがtoCからtoBへと参入した流れになります。
3社は共通して「SaaS+α」を事業の付加価値としている。
この+αへの想いや理由、そして生み出されている結果とは何か?
SaaS+BPOによって、ARPUと向き合い展開を広げていく。
吉兼:
2019年SaaSの未来について考えたとき、今までと同じやり方だとどこかで限界を迎えてしまう可能性があると感じていました。
バーティカルSaaSの良いところはお客様一社一社のARPU(アープ)と向き合うことができることです。
さらにこのARPUはPLの中におけるインパクトがかなり大きい。半年~1年で10倍・100倍に繋げることもできます。
私たちはSaaS+BPOでエンタープライズに対して、このARPUの成長に繋げていく戦い方を行ってきました。
例えば、ChargeSPOT(https://chargespot.jp/)です。
スタート当初、1県からスタートしましたが、すぐに実績を作ったことで、いまでは全国展開に繋げることができました。
そして今後においては、さらなるエンタープライズのPoCを狙いたいと考えております。
飲食店やコンビニなど、1店舗での成功体験が実証できればその後は全国展開の話がスムーズになります。
そのためこれまでのSaaSとは違った進め方となるため、ソフト開発を行う技術職だけではなくビジネスサイドの人がスタートアップでバリューを出す・活躍できるチャンスがあると考えております。
SaaS+オペレーションのサポートによって、お客様との関係値を築き、離れられない状態を作る。
狭間:
私たちはSaaS+オペレーションのサポート、広い意味でのBPOであると考えています。
お客様や物流にとっての価値は「コストダウン」にあります。
ハコベルコネクトを使ってコストダウンに繋げないと、お客様に対しての価値にはならなく、事業としてのバリューにもなりません。
しかし現場にプロダクトを導入しただけでは使用されることはなかったので、お客様をサポートをすることでプロダクトの導入・活用へと進めてきました。
その結果コストダウンはもちろん、一緒に作り上げてきたという「組織間の関係値」を築き上げることができ、お客様の継続利用に繋がりました。
またそれだけでなく、3つの便益を得ることができました。
1つ目はシステムの最適化を行う中でお客様のオペレーションに詳しく理解したことで、食料や飲料メーカーでのシェア獲得に繋げることができたこと。
2つ目はプロダクト導入へのプロセスに時間をかけることで、「一緒に作り上げてきた」状態となり、お客様が離反しづらくなること。
そして3つ目はお客様の様々な課題解決をサポートしてきたことで、新たな課題が出てきたときに第一想起を得ることができたこと。
SaaS+バリューチェーンを”あえて”作ることで、参入障壁をより高くした。
幸松:
私たちのSaaS+受発注領域については、事業ビジョンの背景もありました。
私たちはミッションとして「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」を掲げています。
このために「製造業の根本的な課題を解決する」=見積もり作成を楽にすることに留まらない、大きな価値を出していきたいと考えてきました。
そもそも製造業はコストを下げることが重要な産業ですが、「コストを下げる」といっても工数だけでなく原価を下げるやり方もあります。そして原価を下げることは経営インパクトも大きい。
見積もりが簡単に取れても、見積もりにある原材料が手に入らないと意味がないというお客様の声を受け、「正しい価格提示だけでなく、そのものが手に入る事業を作ろう」と思ったのが受発注事業の戦略転換のきっかけとなりました。
この結果、「調達・生産機能として、物を届けること」と「ソフト提供」という2つのビジネスが両軸で成長でき、相乗効果を生み出す構想ができました。
またあえてバリューチェーンを作ることで、品質保証するノウハウや海外での工場運営のノウハウを掛け算させ、システム開発だけだと難しい「参入障壁の高さ」を作りあげているといえます。
SaaS+αによって様々な価値を見出してきた各社。今後の展望とは?
TMSの拡張とPoCの全国展開
吉兼:
サービスとしては「TMS(配送管理)の拡張」です。
自社の配送ネットワーク上では使いやすいプロダクトになっているが、他社の配送ネットワークではまだ最適化ができていない状態です。
アグリゲーターとしての連携先を増やすことで、顧客の利便性を高めていきたいと考えております。
またビジネス全体としては、大手企業と始めているPoCを全国規模にしていきたいです。
これから1年は飲食・小売・医療の3領域をメインとし、2~3年はその他の産業に対してのインパクトを与えていきたいと考えています。
大手ECによる「当日配送への体制構築」や「倉庫をどこに設けるか」など様々な課題があります。
配送管理や配送員を集める、などコアな部分や入り込んだ課題を解決するようなソフトウェア開発をしていきたいです。
そして何にかを作ろうとしたらAzitに頼めば作ってくれる・そして質もコスパも良い、というイメージに繋がるようなブランディングも必要です。
原価最適化への参入と利便性あるサービス展開
狭間:
今後の展望は2つあります。
1つ目は原価最適化への参入です。すでに物流コストの「マッチング」「業務生産性」には入り込めているので、これからは「原価の最適化」を行いたいと考えています。
私たちの強みでもあるテクノロジーを活用した発注のアロケーション最適化に入り込んでいきます。
2つ目は配送・物流サービスの相互乗り入れをしっかり行うことで、お客様に利便性あるサービスを届けていくことです。
各社から様々なサービスが世の中にリリースされており、お客様目線に立つとサービスが多数あることで複雑化し、ベストな選択が何かわかりにくい状況になりつつあります。
そこで自社サービスだけでなく他社とも連携することで、お客様が最適なサービスの組み合わせを選択し、活用できる状態を作りたいと考えています。
アプリケーションの拡大とグローバル進出
幸松:
今の事業の周辺機能へとアプリケーションの拡大を行いたいと考えています。
私たちが取り扱っている部品は、部品によって製造スケジュールが異なったり、原材料も異なります。
例えば、キャディを導入することで部品の製造効率や、図面設計時の予算などがわかるようなプロダクトなど、様々なプロダクトを出していきたいです。
また製造業はグローバルでも同様で、いいものを安く購入できるとお客様は喜んでくださるので日本にとどまらずアジア・米国進出も視野に入れています。
まだ会社としても成長中のため、やりたいことは様々です。
さいごに
今回レポートで取り上げることができなかった話もディスカッションされ、モデレーター・スピーカーの熱量の高いイベント開催となりました。
イベントにご参加いただいたみなさまありがとうございました。
また、今回日程が合わずに参加できなかった方も、今後様々なイベントを予定しておりますので、ぜひ今後も注目いただけますと幸いです。
また次回のイベントもお楽しみに!